HOME > 2016年 > 6月
2016年06月

2016/6/17 金曜日 12:31 PM

版画という言葉を聞いて皆さんは何を思い浮かべますか?

わだばゴッホになるの棟方志功、国際展で一躍有名になった池田満寿夫、歌磨呂、北斎、写楽の浮世絵版画。 海の向こうなら木口木版のデューラー、レンブラントの銅版画、シャガールのリトグラフ、ウォーホールのシルクスクリーン。

デューラーの時代から現代まで、版種も木版、銅版画、石版画(リト)、シルクスクリーンと様々ですが全てにおいて共通の版画作品、最大の特徴とは何でしょう?

答えは複数性。 同じ作品が複数枚あるということ。 これこそが油絵や日本画、浮世絵肉筆などの一点物と違う、版画作品の最大の特徴です。

それゆえに美術品コレクターにとっては同じ作家の作品でも比較的手に入りやすいということになるわけです。 美術作品の普及という点で版画の果たした役割は大きいものがあります。

さて、ここからが本題ですがこの版画の同じ作品が複数あるということは当然、価格にも反映され同じエディションの作品は価格も全て同じと皆様は思われるのではないでしょうか?

残念ながら答えはノーです。 現存作家の場合はあるいはイエスかもしれませんが厳密に言えば複数のコレクター、あるいは画廊の手を渡っていけば現存作家の同じ版画作品であっても価格には若干の差異が生じてきます。

これが物故作家となればなおさらのこと、同じ版画作品であってもコンディションの問題(旧所有者の保存状態等)が大きく影響してきますし、仮にエディション200枚の作品が一遍に200枚、市場に出るなどどいうことは新作版画と違ってありえない分けですから扱う画廊、画商の仕入れ価格は同じ作家の同じ版画作品であっても大きな違いが生じてしまいます。

中古車の世界でヴィンテージカー(旧車)という言葉がありますが仮に '67年式のフォード・マスタングと言っても一台、一台のコンディション等によって価格は大きく異なってきます。

物故作家の版画作品もこれと同じ。 版画(複数性が特徴)と言っても、もはや一点物と言っても良いのかもしれません。

版画作品といえども一期一会、欲しい作品は出会った時が勝負です。 一度のがすと次の出会いはなかなかないのかもしれません。